「靖国」を外交カードに
こんばんは。日本の2つのゴール、どかんという派手さはありませんでしたが、見直すとなかなか巧い技がありましたね。

私は基本的には靖国に対しては代替施設推進の立場をとっていました(「靖国の問題」)。中国が靖国問題を出すことは確かに内政干渉ではあるでしょうが、それがなくとも、日本人として宗教に関係なく追悼の意を表すことができる施設が必要という立場です。もちろん中国につけいる隙を与えたくないというのもあります。

しかし、今ここで止めてしまっては、中国を増長させるだけで、今後さらに悪影響を及ぼすでしょう。いっそのこと、戦犯だけでなく、空襲で亡くなった人々、銃後を守っていた来た人々、明治以来富国強兵の「富国」のほうで頑張ってきた皆さん、結局日本人全員を祀っちゃえば、相手も振り上げた拳の行き先を失って見物なんじゃないのとも思っていました。でもこれも強要できないんですよね、分祀を強要できないのと同様に、民間の宗教施設だから。

そんななか、以下の2つの主張を読み、自分の中で考えがすっきりしたと思います。

娘通信♪さん: 中国と靖国問題・・内政干渉と党派相克

浮世風呂さん: 河野議長の勇み足:本当に「国益」を守れるのか?

娘通信♪さんは、
中国はこの件を
単なる歴史認識の問題だとは思ってはいない。
彼らが公式的に何を言おうと、
その本音は

 「日本を従属させる」

この一点のみ。
と指摘し、日本国内の意見の対立は中国を利するだけと主張されています。一致団結して中国の圧力をはねのけろということですね。

一方、浮世風呂さんの主張では、「河野洋平・衆議院議長は三権分立の原則を崩すな」という主張も柱ではあるのですが、もう一つの柱は、「ただ自粛するだけでは、国益にならない。何らかの譲歩(国連安保理・常任理事国入りなど)を引き出せ」ということでしょう。

譲歩を引き出すのは難しいかもしれませんが、主張する価値は大いにあると思います。少なくとも圧力をかければ折れる日本ではないことを認識させることができます。靖国問題は、もともと国内問題のはずで、普通なら外交カードになり得るものではありませんが、相手が言ってくれるおかげで外交カードに使うことができますね。

日本国内の対立もうまく使いましょう。

昔55年体制のとき、吉田内閣等は、野党の反対意見を上手く利用してアメリカから譲歩を引き出したと聞いたことがあります。本当は自分も引き出したい条件なのですが、「これがないと野党を抑えきれない」といって、アメリカを折れさせたそうです。昔私は「反対だけで何の譲歩も引き出せない野党」と思っていたのですが、それなりに価値はあったんですね。

さてここで私が何をいおうとしているかと言うと、河野議長やその他参拝自粛論者に、「参拝を自粛するように」ではなくて、「参拝を自粛することで、中国から常任理事国入りの協力をとりつけろ。ガス田開発をやめさせろ、尖閣諸島でガタガタいうのを止めさせろ、...」と言ってもらう。小泉首相はそれを受けて、「国内の意見に抗い難くなったので、この問題で助けて欲しい」と下手に出る姿勢をみせながら主張する。

これには、日本は色々な意見を自由にいうことができる国だということをアピールする効果もあると思います。

これで解決するなんて妄想は持っていません。交渉が決裂しても失うものはありません(ガス田は別ですが)。先に述べたように、日本も一筋縄でいかないことを認識させられれば十分だと思うのです。

追記: SIGHT 24号を買ってきました。特集の一つが「反日を検証する」で、毛里和子さん、藤原帰一さんのインタビューが載っています。SIGHT自体は平和指向が強く、その意味で左寄りと言えるでしょう。しかし、どちらの論者も対立軸で考えるのではなく、プラグマティックな視点から中国との関係をどう築いていくかを論じており、参考になります。藤原帰一さんは小泉首相の靖国参拝をやめれば良いという主張ですが、毛里和子さんのインタビューの中で、
取り引きと言うのも考えられるんでしょうね。安保理常任理事国入りを中国が支援するかわりに、首相在任中は靖国神社の公式参拝はしないとか
とありました。いや、同じ考えがあった、というわけで単なる紹介です。なお、毛里さんはこれがやはり難しいことは認めています。
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by yoshihiroueda | 2005-06-10 01:34 | 日本
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