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おいしゅうございます
美味礼讃
海老沢 泰久 / 文芸春秋
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おはようございます。岸 朝子でございます(ウソ)。

以前「最高を知ること」で紹介した、辻調理師専門学校の辻静雄の伝記的な小説です。

辻静雄が時々自宅で友人を招いて行うプライベートパーティの準備のシーンから始まる。日高三郎は辻調理師専門学校の教授の一人だが今日はじめてこのパーティのシェフを務める。それは辻静雄に直接評価してもらう機会を得たということである。待ち望んでいたにもかかわらず不安で仕方がない。

次に、話は外務省大使の原野健のエピソードに移る。原野はヨーロッパのある国の大使だったときに、辻調理師専門学校に職員(教授)をコックとして出してもらっていた(安い給料だったので差額分を学校側が負担)。原野夫人はコックとして来た青年をメイド代わりに使うばかりか、材料の仕入れに必要な自動車も与えない。彼は自分で中古車を調達するのだが、彼が帰任する際に原野はその自動車を10万円で引き取り、30万円で後任の大使に売るのだ。

辻は原野が許せなかったが、今日のパーティの客の中に入っているのだ。大蔵省局長の町田修一(これも鼻持ちならない人間)が、辻の恩人でもある友人の永井徹也から辻のディナーパーティーの話を聞きつけ、永井に連れて行ってくれるようせがみ、その町田が誘ったのである。...

冒頭のシーンの紹介だけでかなり使っちゃいましたが、これを読むより直接海老沢の文章を読むほうがずっと速く読めるのではないかと思うくらい、平易ではあるが引き込まれる文体。私は海老沢泰久の本はどれも好きですが、根底に流れているテーマ「一流とは何か」、「仕事とは何か」だけでなく、この文体にも惹かれています。

この本の紹介に戻ります。

日本にまともなフランス料理がなかった時代(日本にあったのは「洋食」とか「西洋料理」)。フランスで修行してきたというシェフも皿洗いに毛の生えた程度のことしか実は学んでいない。そいういう時代に、辻は、フランス料理の調理師を育てる学校を設立し、和洋中すべてをそろえる学校に育て上げる。

辻が料理の勉強にフランスに発つ前に、アメリカでガストロノミー(美味学)の権威サミュエル・チェンバレンに話を聞く場面がある。サミュエル・チェンバレンはこういう。
「きみがいまからコックになるとしても、料理の作り方は現場にはいればいくらでも習えるし、それはいつからでもはじめられる。しかし、料理というのは作り方も大事だができあがりの味がすべてなんだ。きみはまずそれを知らなければならない。そしてあらゆる料理のこれがそうだという最終のできあがりの味をきみの舌に徹底的に記憶させるんだ。体が若くて健康なうちにね。...」

このことも「最高を知ること」のひとつだと思います。広島の古葉監督、ドジャーズのラソーダ監督は選手としては大成しませんでしたが、監督としてはすばらしい成果を収めました。このこととつながる話だと思います。

追記: 以下のサイトでもこの本を紹介しています。
A big bear coming out of hibernation (大熊さん): 「美味礼賛」
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by yoshihiroueda | 2004-08-21 10:49 | カルチャー
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